F.C.G.R
|

細部にわたるこだわりと合理性

お客様訪問

Freedom Custom Guitar Research

お客様を訪問し、パッケージのニーズやお困りごと、パッケージとの付き合い方などをうかがい、皆さんに共有しています。

回目は、パッケージアートの代表である小林と営業スタッフの高橋、製造梱包スタッフの桂野が、2016年からお取引をいただいているFreedom Custom Guitar Research(以下F.C.G.R)のショールームと工場を訪れ、代表の深野 真さんにインタビューを行ないました。

 

F.C.G.R代表
Freedom Custom Guitar Research 深野さん

F.C.G.Rについて

F.C.G.Rは、国内最高峰のギター工房としてプロミュージシャンから絶大な支持を得ています。2018年には世界最大規模の楽器ショー「NAMM Show」にて、7,000以上ものブランドの中から選ばれる「Best in Show」のWINNERとして表彰されています。【受賞時の様子・コメント

大型工場での大量生産品ではなく、職人が1本ずつ楽器をハンドメイドする「工房系」メーカーとして、その品質と細部へのこだわりが評価されています。

今回のインタビューは、パッケージアートスタッフであり、20代の頃にロック&ポップバンドのベーシストとして活動経験がある桂野がインタビュアーを務め、深野さんからものづくりに関する貴重なお話を伺いました。

内容盛り沢山で初の2部構成でお届けします。

F.C.G.Rインタビュー
パッケージアート 製造梱包部 桂野敬章

第1部となる今回は、F.C.G.Rがこれまで貫いてきた信念やギター製作にかけるこだわりに焦点を当て、F.C.G.R製品がなぜ国内最高峰と称されるのか、その理由を探ります。

次回の第2部では、出荷に欠かせない梱包材に対するF.C.G.Rの考え方と、パッケージアートがどのように関わっているかを紹介しますのでお楽しみに!

第1部「細部にわたるこだわりと合理性」

「努力をしているという感覚ではなくて、ただ音楽が好きで、ギター作りが好きで、ずっとハマっている」

深野さんは笑顔でこう語ってくれました。

F.C.G.R代表

取材前は、ギター工房界の宮崎駿に会うような感じで緊張していましたが、深野さんが温かく迎えてくださり、緊張も次第にほぐれていきました。

 

【ギター製作の道を志したきっかけは?】

元々はプレイヤーとしてギターをやっていて、高校生の頃は4つのバンドを掛け持ちしていました。父親はフォントのデザイナーで、自分が継げる仕事ではありませんでした。

中学2年生の頃、母親に「来年で義務教育が終わるけどどうするの?」と問われ、そこから必死に進路を考えて、都立高校に進学しました。
結局、高校時代はバンドとマージャンに明け暮れましたけれど。

音楽以外では宮大工にも憧れていて、法隆寺の宮大工棟梁 西岡常一氏の本を読んだりしながら建設業界に進むことも考えました。ただ、ギター工場を見学した際に強く惹かれ、「やっぱりこっちだ!」と決断しました。ちょうど新しくギター製作の学校が設立されることを知り、高校卒業と同時に入学しました。

その学校の担任の先生から誘われ、ギター工場で製造のアルバイトも始めました。これが仕事としてギター製作に関わるようになった始まりです。大好きなギターが弾けて、製作もできるという最高の環境でしたね。

そうしているうちに、どうしてもアメリカに行きたいと思い始め、思い切ってアメリカに渡りました。知り合った日本人の部屋に居候し、本気でアメリカで仕事をしたいと働き口を探していました。ところが、一時帰国した時に再会した学校の先生が新たにギター工房を始めるというので誘われて、結局日本で先生と一緒にギター工房を始めることになりました。2人で始めてから徐々にスタッフは増えていき、12年務めた後に、1998年に荒川区町屋で独立し、現在のF.C.G.Rが誕生しました。

F.C.G.Rロゴ

【創業当初はいかがでしたか?】

荒川区の住宅の多い場所に工場を持ちました。創業当時から同じ場所です。2階建てで1階に木工の作業場、2階がショールームと修理と組込みの作業場、オフィスと台所。
ギターの製作には大きな音も出るので心配していましたが、そこは元々レーシングカーを修理する工場だったみたいです。隣の中華料理屋さんが「注文が聞こえなかった」と言うほど。ギターの音や木工機械の音くらいなら大丈夫そうでした。

最初の3年くらいは本当に忙しくて、なかなか家にも帰れず工場にソファベッドと寝袋を敷いて寝泊まりしていたほどです。

困ったのがお風呂。工場に風呂場がなかった。
ギター製作は、宵っぱりなのです。夜になって仕事の調子が上がってくると、夢中になってしまう。ふと気づくと銭湯がしまっていることも度々。仕方なく2階の台所の給湯器で頭を洗ったり、体を拭いたり。台所がお風呂がわりになってました。

初めの頃は楽器修理がメインの仕事で、北は北海道、南は沖縄、楽器店や個人の方から多くの修理業務を行っていました。ひとつひとつ心を込めて手掛けているうちに評判は高まり、多い時には月に200本以上を修理していました。 
そうして会社が徐々に知られ、「あの修理をするフリーダムが作ったギター」として認知されるようになっていきました。

 F.C.G.Rのヒストリーには、ギター製作への夢と情熱がありました。深野さんの話はユーモアに溢れ、心から音楽と楽器を愛している気持ちがひしひしと伝わり、私はどんどん惹かれていきました。

【F.C.G.Rの魅力は、どこにあると思いますか】

著名なプロのアーティストにも使ってもらっていますが、実は現場のギターテック(アーティストのギターを調整する方)にファンが多いのです。それは、F.C.G.Rのギターは、扱う人のことを徹底的に考えてギターを作っているからです。演奏時だけでなく、クリーニングしたり、調整したり、ギターを扱うあらゆる場面を想定して、こまかい点まで作り込んでいます。

例えば、ギターのボディとパーツを繋いでいるネジとネジ穴づくりには、相当の時間と集中力を注いでいます。

ギターを調整する際にはパーツを取り外すのですが、付け外しを繰り返しているうちに、ネジを受けるネジ山がすり減ってきて微妙にガタついてしまいます。ギターテックは、そのことを熟知しているので、ネジを入れる時にネジ山を傷つけないように慎重にネジを差し込みます。調整時に何本もネジを差し込むことになる場合、かなりの神経と労力を費やすことになります。

F.C.G.Rのネジ穴は特別です。ひとつひとつのネジに合う下穴を開け、ネジを何度も往復させて回しては外しを繰り返し、きれいで深い螺旋を刻み込み、スムーズにネジがネジ穴に滑り込むように作り込んでいます。
こういう作業には一般の製造方法に比べて5倍の時間がかかりますが、使い手のストレスを減らし、ギターを長持ちさせることができます。こういった細かいところまで徹底的に使う人のことを考えて作っている姿勢が支持されているのかなと思ってます。

ー 深野さんによると、法隆寺の修理はすべての木材をバラして行うもののようです。建てた当初から、分解することを想定して設計され、作り込まれている。部材を修理し、傷んだものを差し替えながら、再度組み立て直すという作業を千年を超えて宮大工たちが引き継いでいる。

千年の維持と修繕を見通したものづくり。部材を大切にすること。製作する技術を引き継ぐこと。深野さんのギター作りにも、その深い哲学が流れているように感じました。若い頃の宮大工への憧れが、ギター製作にもつながっているように思えます。

F.C.G.R工房

【なぜあえて東京に工場を持つのでしょうか?】

東京に工場を持つ理由は、木製のギターに特有の事情があるからです。これもギターを扱う人のことを考えたこだわりです。

基本的には、一年中気候が安定していて乾いているところが木製の楽器には最適です。東京は、夏は湿度が高く冬は雪が降るため、その意味では良い環境とは言えません。
しかし、アーティストが実際にギターを使うのは東京の地においてです。そうであれば、東京の過酷とも言える環境に馴染んだ木材でギターを作ることが理にかなっていると考えたのです。
厳選した木材を東京の倉庫で数年間にわたって乾燥させながら、年間で激しく変化する温度や湿度に馴染ませる。そうして馴染んだ木材を使うことで、100年たっても楽器の命が生き続け、長い時間が経っても変わらない音が鳴るギターを作りたいと考えたのです。

ー F.C.G.R製ギターは「100年保証」を掲げています。これは他社ではなかなか見られないことです。「楽器は単なる物ではなく、アーティストの表現のための道具でありパートナー」という理念のもと、楽器の音の追求だけではなく、楽器に触れるすべての人への配慮がそこにはあります。

また、「100年保証」とは、100年後を見据えた職人の教育が必要ということでもあります。後世にわたって同じ品質と理念を継承するために、熟練の職人が次世代の若い職人たちに技術と哲学を伝えていくことが不可欠です。これは単なる技術の継承だけでなく、楽器作りに対する情熱と誇りをも共有するプロセスです。

【ギターを作るうえで大切にしていることは?】

モノづくりではなく、道具作りだと思っています。
アーティストにとってギターは音楽を奏でるための道具であり、最良の相棒である楽器。本質的に良い楽器を作ることで、音楽のある人生やPLAY MUSICの役に立てるような、
「素敵なミュージックライフがフリーダムと共に」あれば最高だなと思います。

 

F.C.G.R

訪問の感想

取材の中で深野さんは「外音はうるさくないですか?」「質問したいことは全部できましたか?」と私たちに幾度となく気遣いをしてくださったのが印象的でした。そういった相手への細やかな気配りや観察眼が楽器製作にもつながっていると感じました。

良い音がする楽器作りはもちろんのこと、F.C.G.R独自の100年保証という「理念」・道具作りとしての「哲学」が大きな差別化要素を生んでいるとわかりました。

次回、第2部ではこだわりぬいた製品の出荷に欠かせない梱包材に対するF.C.G.Rの考えと、パッケージアートがどう関わっているのかをご紹介します!

会社紹介

Shop & Show Room
F.C.G.R工房

Freedom Custom Guitar Research

Similar Posts